資金調達以上の価値を提供するFUNDINNOという「場」 〜「社内の力だけではできなかったことを実現してくれました」〜

2020年5月18日 発行者情報

ルセット・ナインはレストランや食品製造加工の現場、農水産業の生産地など、様々な食のバックヤードで、高い鮮度保持効果を発揮する高電位電圧発生装置「TT-Box©」という製品シリーズを展開している。

「鮮度保持技術」でフードビジネスを刷新する、SDGs時代のフード・バックヤード・イノベーションを起こしている企業だ。

資金調達とマーケティングを同時に可能にする

多くのスタートアップ同様、ルセット・ナインもシード期には資金調達に苦労した。

「開業当初は事業成績が芳しくなく、金融機関からの借り入れが厳しいフェーズでした。それでもなんとかして自力で資金調達をしようとしていましたが、そんな時、元証券会社の人の紹介で株式投資型クラウドファンディングで資金調達できるFUNDINNOのことを知りました。」

当初、大塚氏は資金調達問題と同時に、”鮮度保持”という新しい技術をどのように広めるかにも悩んでいた。レストラン、食品会社も、「とれたて」「鮮度」にこだわり、それを売りにしている。ルセット・ナインの提供する「鮮度保持技術」を導入し、活用していても、そのことが「新鮮」のイメージを損なう可能性があるので表に出したくない、という会社すらあった。

素晴らしい技術を提供すればするほど、それを公表することができないジレンマ・・・「マーケティング」に頭を悩ませていた大塚氏は、改めて自らの事業について改めて深く考えた。

「この技術を使って、フードロスや、人の働き方改革などに貢献できることを広く知らせたい」と大塚氏は初心に戻り、資金調達プラスマーケティングの機能も持つFUNDINNOでの資金調達を決めた。

資金調達にレバレッジをきかせる「動画」

FUNDINNOでは調達会社が審査を通過すると募集に向けてヒアリングを開始する。

それまで、食品関係の方には何回もプレゼンしてきた大塚氏だったが、食品関係者ではない一般の投資家に伝えようと思うと、それは従来のプレゼンとは全く別のものだった。

大塚氏は、投資家に対して事業をどう伝えたらいいかを2ヶ月間、考えに考えた。

その思考の末に自らの事業の”社会性”への意義を改めて強く実感した。

ところで、食品の世界では、現場のシェフと経営者は別であるケースがよくある。

シェフにとって鮮度保持は命だが、経営者は「この冷蔵庫を入れたら数字がどうなるか?」という観点になりがちだ。しかし、オペレーションという観点からだと経営者に説明しやすいことを、大塚氏は募集ページを作るヒアリングの中での発見した。

さらに、大塚氏が意義を感じたのは、募集ページ中の動画だった。動画には有名なシェフである日高良実氏が登場してくれた。

調達成功後も、FUNDINNOのページを見せると、「あのシェフが使っているなら」ということで導入が決まったケースもある。

ルセット・ナインも新型コロナウィルスによる影響は受けている。ショールームを出す話もあったが、ストップしている。しかし、大塚氏は持ち前の発想の転換にスピードをつけている。

「今は物理的な場所ではなく、お客様にインパクトがあった『動画』によってTT-Box©の使い方をお知らせしていく手法に取り組んでいます。」

ルセット・ナインには、この技術について、株主やお客様にお伝えしたい内容がたくさんある。2020年5月現在、多くの飲食店がテイクアウトに業態変更しているが、テイクアウトの食材の仕入れにこの技術があることのメリット、通常の飲食とテイクアウトの衛生管理では必要なことが異なるということなど、枚挙にいとまがない。

大塚氏に、もしコロナ騒動がなかったらどうしていたかを聞いてみた。

「ビフォアコロナのままやっていたら、直でお会いして営業していたでしょう。自粛ということがあったからこそ、自らが動かなくても動画が機能するということを、お客様や株主様から教えていただきました。」

エンジェル投資家は事業の応援団

ビフォーFUNDINNOではルセット・ナインの株主は19社だったが、FUNDINNOでの調達後は242人の投資家が増えた。

FUNDINNOは単に資金調達するだけの場ではない。ファンとなった個人投資家は、事業を応援してくれる。

FUNDINNOの投資家であり、シェフでもある方が、「探していた商品だった」ということで導入が進み、さらに、その方からご紹介された別の飲食業者にも導入が進んだというケースがある。

紹介先と株主が同時に手に入ったのである。

そこで大塚氏は、2020年2月から株主、クライアントに対してメルマガ発行を開始した。その中で統計を取ると、FUNDINNO投資家からの返信が多い。FUNDINNO投資家は、自分の事業のこと、導入の感想、季節の食材の話なども返信で伝えてくれる。「活動をわかってもらえるようになってきたことが何より嬉しい」と大塚氏は実感を込める。

ちなみに地方での導入については、大塚氏は行くことができなかった。納入した製品には問題がなかったものの、運送会社の対応が良くなかったという。通常ならば、クレームがつき、次回からは注文がないだろう。実際、大塚氏はFUNDINNO以前の株主からはフィードバックというものを受けたことがない。しかし、FUNDINNOの投資家は厳しい意見ながらも愛情あるフィードバックを返してくれた。

大塚氏は、成長することを助けてくれる株主のいるありがたさを実感した。だからこそ、技術、事業、共になおさら期待に応えなければ、と思う。

株主とのインタラクティブな関係性の深まり。これは事業会社にとって大きな安心感である。

FUNDINNOでは、契約上、調達できなくても10万円の手数料の返金はない。大塚氏にこの10万円についてどう考えるかを伺った。

「たった10万で動画を作ってくださって、それをずっと使わせていただけて、公認会計士さんが事業計画まで一緒に立ててくれるのですから、安心までついてきて、安いものだと思います。」

では、調達後の手数料の20%についてはどうだろうか?

「事業計画、調達後のエンジェル税制、株主との連絡など全て含めて自分の会社ではできなかったことなので、この費用も問題ないと思っています。他のクラウドファンディングの会社でも大体20%でした。逆に、これより安いと不安になります。できないことができないままだったことを考えれば、できるようになったことが大きな価値です。」

大塚氏から資金調達に悩むスタートアップへの応援メッセージ

「コロナは自分の事業の社会性を考えるきっかけになります。

私は、事業はできるところからスタートするのではなく、人の役に立つとは何か?からスタートするものだと思っています。

この1ヶ月、私はメンバーたちとたくさん話をしました。自分たちの物を売りたい、ではなく、社会への貢献というところを見つめ直すと、事業がクリアになり、逆にやらないでいいことを捨てられます。人はどうしても余計なことをしてしまうものではないでしょうか?

もはや、物を大量に作って売って、という時代ではないことが明らかになりました。

私たちには、あるものをどう使っていくか、ちゃんと使うにはどうしたらいいかを伝える義務があると思っています。

生産者さんも、飲食店向きの商品は売り先をなくし、市場関係の方々は困っています。

世の中のリアルな物の流れが変わっています。食品というリアルな物が、リアルな場で物流が滞った時に、どこで止めて、どこで鮮度保持をすばいいのか、これまで毎日だったものを週一で回せるためにはどうしたらいいのか? などから、新しいロジスティックスの考え方が出てきています。

今、地域と都会、物の流れ方、食のリアルな仕組みが劇的に変わろうとしています。私たちも遅れないようにしなければいけません。

そうは言っても私たちは「食のバックヤード」です。厨房の中の技術であり、表に出ないリードの仕方をしなければならないのです。

私たちにとって、お客様の声は次の製品・サービスの源です。不自由がある時は、お客様からの情報が集まりやすくなります。他社とも連携を取りながら、食の業界の社長さんたちが上手に現況を乗り切り、次のステージに行くお手伝いをしたいと思っています。」

産地直送の鮮魚、朝採れの野菜・・・長い時間をかけて、日本の食のバックヤードを疲弊させてきた、強い鮮度へのこだわりの悪循環を断ち切る「TT-Box©」。

その価値が、FUNDINNO投資家からも広まっていくのは、FUNDINNOの2万人以上いる投資家の層の厚さゆえである。