投資家でありファンド運営者である事業家が FUNDINNOで資金調達をした理由

2020年5月22日 発行者情報

株式会社アナムネ代表 菅原 康之氏

目次

”世界に数人しかいないバックグラウンドを持つその1人”がFUNDINNOを選んだ理由

VCのパートナーは数多くいる。

さらに、経営者は星の数ほどいる。

しかし、VCのパートナーであり、且つ、経営者である人は実に少ない。

さらに、投資家であり、ファンドとしても独立しながら、経営者もしている人は、世界に数人しかいない。

オンライン診療のパイオニア、アナムネ代表の菅原さんは、その数人中の一人である。

「ベンチャーキャピタルに属しながら事業をやっている人も、エンジェル投資家をしながら起業家をやっている人もいますが、スタートアップの経営者として外部投資家から調達して企業経営をしながら、ファンドとしても独立して投資家からお金を集めて運営しているのは、日本では私一人だけのようです。

投資家が事業を行うのは利益相反と言われがちで、日本ではまだ少ないのですが、矛盾はありません。

むしろ、私は投資家が普通に起業するようになるといいと思っています。」

なぜそう思うのか、パズルのピースをはめるようにインタビューは進んだ。

存在としての希少な価値感が半端ない菅原さんは、投資家なら資金調達には困らないのでは?という素朴な疑問に次のように答えた。

「私は、VCで投資家をしている立場上、自分の事業については自己資金か、借り入れか、エンジェル投資家からの資金調達かにしようとしていました。

そんな折、知人の紹介でFUNDINNOと出会いました。」

事業を成長させるためにはお金が必要だ。経営者は如何なる状況であってもお金を切らすわけにはいかない。いい投資家から必要資金を集めることが、何よりも大切である。

置かれていた環境が、通常の資金調達をしにくい中で、株式投資型クラウドファンディングという新しい資金調達方法に出会ったのだ。

そして、菅原さん率いるアナムネは、FUNDINNOにおいて281人の投資家から、目標募集金額をはるかに上回る49,500,000円の資金調達に成功する。

VCの視点があるからこその事業家としての成功

そもそも、アナムネの事業は、菅原さんが医師である奥様のお仕事をサポートしたいと思ったことに端を発している。

「私は、身近な人、目に見える人を救うところからビジネスを作るべきだと思っています。目に見える人の要素を拡張すると、世界に徐々に繋がってます。例えば、妻の存在をセグメントとして切り分けると、「女性医師」であり、「出産・育児などのライフイベントによって働きにくくなった女性」に要素分解できます。これらの課題と僕らのコンセプトが合っていたので、女性医師には共感してもらえます。

その結果として、女性医師に相談したい人は女性であり、健康不安を日々抱えているのも女性であるということで、サービスのデマンドとサプライが一致したビジネスができあがりました。

これを拡張していくと、ターゲットユーザーも拡張します。日々健康不安を抱えるのは女性だけではなく男性もいます。そもそも日本在住だけではなく、海外にいる人も健康不安を抱えている人もいて、ターゲットユーザー(=市場規模)は自然に広がっていきます。」

さらに、菅原さんにはVCの視点があるので、投資する人はどういうビジネスなら応援したくなるかがわかっている。

普通の事業は、お金を払ってくれるユーザーとクライアントを見るが、アナムネに投資する人たちは、もう少し広いマーケットと成長性を見ているという。

対ユーザー、クライアントへのマーケティングと、対投資家(資本市場)へのマーケティングは異なる。このことを見られるかどうかの違いは大きい。

この両方を睨みながらどの事業を伸ばせばいいかを見ていくと、望んだタイミングで資金調達をしながら成長することができる可能性が高まるのだ。

「一般的に、いくつかの事業のオプションがある中で選択をする時に、儲かりそう、成長しやすそうということだけではなく、資本市場から見て、ここが強化されていれば次の資金調達につながりやすい、というポイントがあります。これは、私が投資家でもあるからわかるのですが、その優先順位のつけ方が大切なのだと思います。」

ビフォーコロナ、アフターコロナで変わったことは

一般的に、ビフォーコロナで何をやっていたかが、アフターコロナの事業展開を運命づける。

アナムネでは、ビフォーコロナに営業をかけて積み上げたパイプラインが、実際、コロナ問題が大きくなってから大いに活性化した。

アナムネはオンラインの医療相談を対コンシューマー向けに行いながら、法人向けにも提供している。現在、生損保・製薬メーカーなどと共同プロジェクトを仕込んでおり、相手の持っているサービスにオンライン医療相談をジョイントさせて付加価値を上げている。

製薬メーカーだと、コンシューマー向けに商材を持っているので、ワンストップで医者のサポートをしながら購入してもらうのである。

一方で、サプライヤー側として女性医師の登録が増えた。もともと生活の変化によって働きにくくなった女性医師をネットワークして事業化をしているが、コロナ禍においてお子さんがいる女性医師が勤務医を続けることはとても厳しいと感じるようになってきた。なぜなら、院内感染の恐れと、学校に行くことができずに家にいる子供の世話をすることの両立で、さらに勤務がしにくくなるからだ。そういった理由から、ネットで探してアナムネに登録する女性医師が増えた。アナムネではこれは今後も加速する傾向と見ている。

アナムネの次の展開が気になる。

4/7に、オンライン診療の規制が時限的措置だが解放されることが閣議決定した。元来、初診対面原則があり、オンライン診療は可能だが一番初めは対面診療しなければならなかったが、官邸からの指示で一気に初診から非対面でもよくなり、それに対して保険診療をつける形になった。

アナムネでは、このことがなくてもオンライン診療に入る準備はしていたが、ここにきて急加速した。

「オンライン診療プラットフォーム」を作るということでPRも出した。

「これで僕らが描いている”新しい病院のあり方”が提示できるようになります。

今の病院の課題は、実際に病気になったとほぼ確信してから薬をもらいに行くところになっていることです。

これからの時代は、単に長生きすることより如何に健康に長生きするかが重要なので、治療に行く前から健康状態を維持するところまで含めてサポートするのがこれからのあるべき病院のカタチだと考えます。困った時は、まずはオンラインで普段から健康情報をモニタリングするサービスがあり、それでも困ったら信頼できるいりょう情報をネットで調べ(アナムネ社ではclila(クリラ)という医療情報特化の検索メディアも運営している)、それでもわからなかったらオンラインで相談して、これは診療した方がいいということになれば一番初めにオンライン診療を受けて、それでも確定診断をしなければいけないとなった時は病院に行き、実際病院に行った後に聞けなかった相談や経過観察みたいなものをオンライン医療相談で行うという利用者の一連の行動をサポートすべきであると考えていて、これは我々のプラットフォームだからこそできるので、もっと予防に重点を置いた病院ができ上がります。」

あらゆるものが進化する中、予防も進化するのだ。

コロナショックにより、漠然と「あったらいいな」と思っていたものが形になる流れが加速されるようだ。

他業界でも起こったが、規制が緩和される時は、オンライン専業のものができる。サイバーエージェントもオンライン専業の広告代理店で伸びた、アマゾンはオンライン専業の本屋で伸びた。病院も同じようになるのだろう。

「僕らはオンライン専業になります。その時、新しい病院の体験が提供できます。ここからが成長のスタートです。」

FUNDINNOで調達したからこそ生まれたもの

菅原さんは、個別連絡をしてきたFUNDINNO投資家とは直接会って話をしている。

元生命保険会社勤務のFUNDINNO投資家が、保険系の会社の、複数の社長に引き合わせてくれた。実際のビジネスには繋がらなかったものの、契約一歩手前までいったことで経験値を積むことができた。

スタートアップにとって、「人を繋いでくれる」ということは大きな価値である。

特に、直接アプローチできない階層に繋げてもらえることは非常にありがたい。

本来、プロ投資家から投資を受ける時の大きな価値の一つは「人的ネットワーク」である。

一般的に株式投資型クラウドファンディングの場合、そのメリットが得られないのだが、FUNDINNOの場合はそれを一部の投資家が担ってくれている。これはアナムネの事業にとってはプラスだった。

「私はあるべき姿の実現を大事にしていますが、それのみに進むタイプではありません。もう一方で積み上げた経験、アセットの先にこれをやりたいと思うことやできることがが拡がり、先に大きなあるべき姿を見据えつつ、目の前の経験を積み重ねてきただけです。

そもそも、日本では、「何かをやりたい」と思う人が少ないのと、何かをやりたいと思った時に相談して否定されるとやめる人が多いと思うのですが、実際には、やり始めると結構応援してくれる人は多いものです。

否定する人が99人いても、1人だけでも「いいね」と言ってくれる人がいれば先に進めます。その人の存在が支えてくれるからです。これがベンチャーエコシステムの良さですね。なので、そこに行き着くまでめげずにやることが大切です。」

これから資金調達するベンチャーに贈る言葉

菅原さんは「株式投資型クラウドファンディングはスタートアップにとって理想的な調達方法の一つである」と言う。スタートアップが実現しようとしている世界を共感して応援してくれるのがエンジェル投資家の役割だが、FUNDINNOには特にそれが色濃く出ている投資家が多い、というのが菅原さんの実感だ。

先輩である菅原さんから起業家に贈りたい言葉がある。

菅原さんが起業家に常に追いかけて欲しいのは、

「あなたがどんな世界にしたいのですか?」

「あなたが考えるより豊かな世界はどういうものですか?」

ということだ。

それらを明確にして、それに向かった事業を着実に前に進めることが事業の成功につながる。

一方、菅原さんの投資家ならではの視点から、資金調達をして「投資家からお金をもらった」という意識の起業家には警鐘を鳴らす。

「投資家から預かったお金は、もらったお金ではありません。投資していただいたということは、私たちはその資金を「事業」の形で運用してリターンを返さなければならない。投資を運用している立場であるということをちゃんと理解して投資を引き受けることが大切です。」

菅原さんは、各ラウンドの投資家に4倍にしてお金を返すことを自分の中で考えて事業を行っている。

逆に、4倍にして返せる自信がある時に調達をかけている。

「投資家は命の次に大事なお金を預けてくれているので、きちんと運用してリターンを何倍にもして返す自覚の元に投資を受けることが大切です。」

菅原さんの言動のベースには「覚悟」がある。

覚悟を決めるからこそ生み出される現実というものがあり、それを体現し続ける菅原さんだからこそ、投資家に応援されるのだということがわかる。