FUNDINNOが、時代に選別され、本質的なサービスとなることを期待しています
広範囲の業界に対するアーリーステージ(起業直後)での投資を通じて、累計運用ファンド総額994億円、累計投資社数1,005社、累計投資金額785億円、IPO社数149社などの日本有数の実績を誇る日本ベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役会長 奥原主一氏に、FUNDINNOについてお話を伺いました。
奥原氏(以下、奥原 敬称略)は、1992年東京大学工学部産業機械工学科卒。1994年東京大学工学系研究科情報機械工学修了。同年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社され、大手メーカーにて最先端の技術コンサルティングに関与されました。1998年日本ベンチャーキャピタル入社。2008年取締役投資部長就任。2009年4月代表取締役社長就任、2019年6月より現職。
※各種数値は2021年3月時点
■株式投資型クラウドファンディングは時代の流れ
FUNDINNOの話を最初に聞いたときの印象を教えて下さい。
奥原:「初めて株式投資型クラウドファンディング(以下、ECF)の話を聞いた時は、私自身が新しいもの好きということもありますが、『こういった新しいサービスが受け入れられる世の中になると良いな』と思った記憶があります。基本的に、新しいサービスが世に出た際は、時代の選別を受けるべきだと考えています。ECFに関する日本で最初のサービスはFUNDINNOでしたが、現在はFUNDINNO以外にもECFサービスが出てきています。それ自体はFUNDINNOにとって大変なことかもしれませんが、大切なことは複数のサービスが世に出て、ECF自体が時代の目に止まる中で、選別されることです。FUNDINNOには、その時代の選別を経て、本質的なサービスとなることを期待しています。」
■一般の投資家が株主になることは事業会社にとってむしろプラス
いわゆる反社株主問題や、多数株主問題についてお考えを教えて下さい。
奥原:「日本クラウドキャピタルのチェック体制【SPIネットワーク(反社会的勢力をチェックするシステム)を活用したチェック体制】を聞く限り、一般的なチェック水準を下回っているようには思えません。また、ECFでは1人当たりの持ち株が少ないため、反社に類する株主の影響は少ないでしょう。株主数が増えることについても気になりません。法整備される前は、未上場企業は株主が50人を超えると少人数私募の要件ではなくなり、多人数向け取得勧誘となるので上場時の手続きに手間がかかりましたが、今は関係ありません。過去に弊社出資後に、FUNDINNOを利用した事業会社がありますが、その企業の株主総会に個人株主の方が何名かいらっしゃったことがありました。能動的かつ投資への意識が高い方たちで、そのやり取りを通じて、経営者や従業員への良い刺激となったと思います。上場後を見据える経営者なら、個人株主が増えることが気になるはずがありません。中には、サービスや技術について真剣に質問をされ、何か手伝いをしたいと申し出る個人投資家もいます。そのような投資家は、根本的に、弊社と変わらないと考えています。既に、多くのエンジェル投資家から投資を受けている会社は、現実を見れば数多くあるので、個人投資家とVCは問題なく共存できると考えています。」
■プラスの投資回収事例の創出が必要
FUNDINNOがさらに成長するためには何が必要でしょうか。
奥原:「IPOやプラスのM&Aがもっと出てくると、個人投資家もより元気が出ると思います。投資後3年以上経った時点で投資した時より明らかに売り上げが上がっている企業が増えていくと、投資回収ができる事例がどんどん増えてくるのではないでしょうか。投資をする側にとっては、投資した案件が投資回収できる状態にならないと確定的な評価をすることが難しいので、良い投資回収事例が増えることが大切だと思います。」
■企業の成長を支援するための経営管理支援を期待
FUNDINNOに期待することを教えて下さい。
奥原:「企業の成長をサポートするという観点で、一つ経営管理というものは重要なのではないでしょうか。つまり、FUNDINNOでの調達を通じて作成支援した事業計画が、調達後どれぐらい予定通りにいっているのか、外している場合はどういう理由なのかを絶えずモニタリングできるような状況があると、その後に続く企業にとっても、非常に有用だと思っております。日本クラウドキャピタルではFUNDOORというサービスを通じて、調達後の状況、予実管理、株主への情報共有が可能と聞いています。シード、アーリーステージだと、良い面だけにフォーカスをした資料を作る事業会社もあります。しかし、毎月の経営管理データを参照できる状況であれば、冷静な目で投資判断ができ、VCも共に投資ができる環境が整ってくるのではないでしょうか。」