スタートアップ立ち上げの経験値を投資家側から生かして「夢が描ける社会」を創る
エンジェル投資家:竹村様
医師であり起業家であり投資家であるという稀有なキャリアをお持ちでいらっしゃいますね。
医学生時代に一度、出版で起業しました。私のいた高知というのは、若い人が面白いことをすることを守ってくれる土壌があり、そこで実際に応援していただいて学んだことがたくさんあります。それを引き継ぐ形で今度は自分がスタートアップの応援をするようになりました。
起業という意味では、最近、医師のプレーヤーが増えています。私たち第三世代が医療情報でIT起業をしているのです。私も大学の時に起業した仲間たちと「面白いことをやりたいね」と、今度は遠隔医療で起業しました。ざっくりいうと医師だけのSNS のようなサービスで、医療のことを何でも相談できます。
次にやりたいことの構想はありますか?
年齢的に自分たちで一から作るのではなく、VCなのかエンジェルなのかコンサルなのかわかりませんが、支援的なものに回る方がいいかなと思っています。
これまで会社の代表と二人で役割分担してやってきました。彼がストラテジーとタクティクス、私がタスクとバトルを担当してコンビで全て見られるような体制で医療ITをやってきたので、そういう意味で今度は人をお手伝いできるといいなと思っています。
投資をするようになったタイミングは?
スタートアップをやってきて、投資を受ける側の難しさを経験しました。
開業資金はベンチャーの大会で優勝し、情報通信研究機構の予算と総務省ICTイノベーション創出プログラムの先進的情報通信技術実用化支援の補助金を2年連続いただくなどしました。VCのお金も入っていましたが、自由にお金が入ってきたことはとても大きかったです。
資金調達できない時期はありませんでしたが、投資側との条件のすり合わせは苦労しました。我々と投資側の両者がハッピーになるようにしなければいけないので、配分には苦心しました。
投資を受ける側から、なぜ投資をする側に回ったかと聞かれたら・・・しかし、投資するのに理由って必要でしょうか? 銀行に眠る10万は投資した方がいいと思うのです。たとえ失敗しても、より良い社会になる可能性があるなら、それはそれでいいではないですか? 生活に困らないお金を投資に回すのは、むしろあるべき姿だと思っています。
ビジョンのある非上場の会社の成功をお手伝いして、社会が良くなるならハッピーです。
投資のポリシーはありますか?
非上場はFUNDINNOが初めてです。クラウドファンディング投資で検索して出てきたのがFUNDINNOだけだったので、投資家登録してやってみました。自分個人でこれだけのシードを探すのは無理なので、FUNDINNOのサイトで情報を見られるだけでも素晴らしいと思います。これだけ将来の夢・希望を見せてもらえるところはなかなかありません。
私はテック系全般が好きなので、ヘルステックをはじめとして一次産業の農林水産テックに興味があります。国の土台は一次産業だと思っていますので。
FUNDINNOで模擬臓器の会社にも応募しました。日本は医療業界で実になりそうなシードが少ないので、形になるだけでもすごいし、医療系ベンチャーは支援していかないといけないと思っています。日本はバイオや創薬系ベンチャーはいいけれど、そうでないときつくて、VCもお金を入れたいと言っている割には入れません。元々、日本のVCでメディカルが得意なところが少ないのです。VCがいないとベンチャー企業は育たず、メンターもいない。だから日本は世界的に言ってもITヘルスケアが超絶に弱いのです。
スタートアップの多くは、初めての経験なのに指針を示してくれる人がいない状況です。特に医療系ITベンチャーにはメンターがいません。FUNDINNOは資金調達するところですが、スタートアップの支援もしているので、メンター的存在になってあげて欲しいですね。
投資されている会社とのどのようにお付き合いされていますか?
シードからお付き合いさせてもらっているので、自分がチームの一員みたいになれる関係性だといいかなと思っています。勝っても負けても喜べる感覚が持てるといいですね。スポーツでいうところのサポーターでしょうか。
マイページで何に投資したかは見ますが、投資した会社の定期的チェックはしていません。IR情報が来ないとHPを調べてみたりはしますが、気が向いた時くらいです。スタートアップは専属広報がいないから仕方ないと思いますが、定期的な報告は来るといいですね。個々のミートアップがあると行きやすいと思います。
投資のペースはどれくらいですか?
準備としてバックグラウンドを調べるのに一週間は必要なので、5社はきついですね。大口でなければ3〜4社並列でもいいのではと思っています。
個人的に思うのが、ページのUIが経営者のSNSに紐づいていないのはとても残念です。スタートアップは経営者の人となりとビジョンが大切です。知らないと投資できないので、ビジョンは語ってほしいですね。
ビジョンといっても、何をしたいかより、それで世の中がどうハッピーになるかを表現してもらいたいです。私は夢が描ける社会にしたいので、イノベーション起こせそうな会社に投資したいのです。普通の株のように、業績上がりそうだから、配当良さそうだから、ではありません。
エンジェル税制は使っていますか?
起業家として、そして投資家として思うのは、投資する方からしたらあったら嬉しいですが、企業側からすると手続きが少し煩雑なところがありますね。
FUNDINNOに期待されることはありますか?
日本は投資を受ける先の選択肢が狭いので、FUNDINNOはそこを広げてくださるところとしてとてもありがたいのですが、できればシリーズAも取り扱っていただきたいです。
また、先ほども言ったようにスタートアップはメンターを見つけるのがとても難しいので、メンターとしての役割を果たしていただいているなら、もっと広くそれを世に出してほしいですね。スタートアップをやる上で、お金はもちろん大切ですが、経験からアドバイスをくれる人がとても大切です。その人はバックグラウンドを知っていなければならず、知名度だけの人や会社を何件も再建しているプロ社長などでも意味がありません。誰に押してもらうかも難しいところですね。メンターの能力はベンチャーの能力より測りにくいと思います。
FUNDINNOは、スタートアップを応援していることをもっとつまびらかにして、日本のシードを支えているという自負を表に出してください。そのためには、どういった形で案件募集までやっているのかの全プロセスみたいなところを明らかにした方がいいと思います。
スタートアップをシードの段階でコケさせないというのはとても大切なことです。FUNDINNOはシードをしっかりと見てくれるから、日本のシードを大切に育てるしっかりした土壌になってもらいたいです。
スタートアップにとって、資金調達においてVCだけではない選択肢があるのとないのとでは全然違います。新調達の時には、何本も柱を立てて選択していいはずですが、日本にはその選択肢が少ないのです。
FUNDINNOには、シリーズAと同様に、シードになっていないような、もう一段階前も扱っていただきたいですね。ハッカソンみたいなものもやって、「FUNDINNOハッカソン」が出てきたりしたらすごくいいのではと思います。また、メディカルへの投資はまだ日本でしっかりしたものがないので、ぜひFUNDINNOでやってほしいですね。