企業の血液=カネの流れの設計図、資本政策を制する!

2019年9月17日 コンテンツ

映画『ソーシャル・ネットワーク』をご覧になったことはありますか?

フェイスブックの共同創業者であるマーク・ザッカーバーグとエドゥアルド・サベリンが初めに決めた持分比率は、会社の成長に伴い問題となりました。そしてザッカーバーグはサベリンの株を事実上取り上げようとしたため、訴えられました。

創業者の仲が悪くなると、会社自体に不穏な空気が生まれることを見事に示しています。

実話に基づくこの映画は、急成長したスタートアップが資本政策で失敗した一例です。

事業を起こしたばかり(シード・アーリー期)の企業がなすべきことはたくさんあり、新米事業家の悩みは尽きません。事業に不可欠な「ヒト、カネ、モノ、情報」の中でも、いかに「カネ」を集め、稼働させて利益を出し、還元するかは事業の肝となります。

その「カネ」の部分の中核である株式の発行・移動計画である資本政策について、初めから熟知している事業家はいなくて当然です。実際、多くの事業家から「資本政策の立て方がわからない」「そもそも資本政策が何なのかわからない」「すでに資本政策で失敗した気がするがリカバリーできるか?」などの声が上がっています。

そこで、この場では資本政策について考えていきたいと思います。

「カネ」は血液に例えられます。血液である「カネ」が流れなければ、ヒト、モノ、情報は動かないので、事業を成長させようとしている企業は、スタートする前に資本政策を立案させておく必要があります。
事業内容に沿って綿密な事業計画を立て、企業価値を算定し、適正な資本政策を策定する、この部分は基盤として非常に重要なので、経営者がエネルギーを注ぐべきポイントです。

資本には銀行からの借り入れのような「他人資本」と、株式で調達する「自己資本」があり、株主は「自己」つまり会社の仲間です。成長を見込んで信じてくれた大切な人たちを、自分たちの都合で振り回すわけにはいきません。だから一度株主になってもらうと、うまくいかなくなった時(それは往々にしてあります)に「出て行って欲しい」とは言いにくいので、誰が何株持つかは設立当初からよく考えておかなければなりません。これは資本政策が不可逆であると言われる理由の一つです。

特に創業者は当初お金がないことが多いので、創業者の持分は一度薄まったら二度と高まることはないと考えていいでしょう。資本政策の策定においては、やり直す必要がないように、初期段階からなるべくうまくいくような計画にしておくことが重要です。

日本では毎年約50,000社が起業していますが、資金調達する会社は1,000社ほどです。さらにこの中で上場する会社の数はさらに減り、2018年の上場企業数は98社にとどまります。(JPX:日本取引所グループ 上場企業情報 https://www.jpx.co.jp/listing/index.html
上場を目指す会社ばかりではありませんが、起業した会社が存続・成長して行くためには、資金調達や株式公開が必要になる側面もあります。その時に必要になるのが資本政策です。

ここで資本政策の定義を明らかにしておきましょう。
資本政策の定義は、端的に言えば、会社の事業遂行上必要な資金調達実現のための施策です。資本政策の策定においては、経営に必要な資金、経営支配権などを、事業計画、経営戦略に合わせてトータルで考えます。
そもそも資本政策の目的は、事業計画を達成することにあります。よって資本政策とは、それぞれの企業が達成したい目的のために資本をどう集め、どのように活用していくかを決める財務戦略とも言えます。

以下に資本政策の目標、考慮事項、方法についてポイントをまとめ、これからシリーズで具体的にお伝えしていきます。

資本政策の目標

・資金を調達する
・経営者層の持株比率を維持する
・創業者のキャピタルゲインを確保する
・後継者への経営権の移動や相続税の納税資金を確保する

資本政策において具体的に考慮すべき事項

・株式上場後の株主構成
・自社の事業計画
・資金調達計画
・創業者利潤の実現や事業承継対策

資本政策の方法

・第三者割当増資
・株式移動
・株式分割
・新株予約権
・ストックオプション
・優先株式

先述したように、資本政策は一度実行したら元通りにすることは至難です。しかし事業計画の修正に従って見直しは必要になります。それを専門家に完全に任せようとすると、見直しにくくなります。なぜなら専門家自体の数が少ない上に、創業期の資金が限られている状態で専門家を雇うことは往々にして難しく、しかも専門家とはいえ創業者の意図を完全に汲み取り、最適なアドバイスができるとは限らないからです。

そうはいっても専門家なしで立案するのも難度が高いので、専門家のアドバイスを元に自社主導で立案していくことをお勧めします。やはり事業を創造し、成長させるのは事業主であり、すべての責任を負うからこそ事業の成功があるのです。

本シリーズでは、資本政策について、主にシード/アーリー期のスタートアップ企業にとって有益な情報をお伝えしていきます。

*スタートアップ企業:創業から3〜4年以内の上場を目指す企業。

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