株主コミュニティ

2020年6月12日 コンテンツ

株主コミュニティ

平成30年3月、これまで非上場株式を売買するための制度であったグリーンシートが廃止されました。

そこで、グリーンシートに代わる非上場株式の取引手段として「株主コミュニティ」が注目されています。

目次

グリーンシートは1997年に開始された非上場株式の売買制度です。グリーンシート銘柄として登録された会社の株式であれば、一定の制限範囲内で売買をすることが可能でした。

しかし、グリーンシート制度解禁後の証券取引所の上場基準の緩和、情報開示などのコストが企業側にとって重い負担となったこと、取り扱う証券会社の減少、銘柄に対するマーケットインフラとしての機能が不十分だったことなどから、実質的に機能しなくなっていました。

金融庁はこれらの事実を重く見た上で、地域に根ざした企業がより資金調達しやすくなるような新たな制度を構築していくことの必要性を指摘し、日本証券業協会において、グリーンシート制度に代わる非上場株式の取引・交換ニーズを満たすための新たな制度として、2015年5月に誕生させたのが株主コミュニティ制度です。

2020年5月8日現在で、6社の証券会社において、合計25の株主コミュニティが組成・運営されています。

株主コミュニティは、”コミュニティ”といっても人の集まりではなく、未上場株を売買できる”仕組み”です。そして、これは非上場企業等の株式を売買・換金するニーズに応えた、相対取引制度の一つです。

運営資格を持つ証券会社は未上場企業の株主コミュニティを組成することで、その「株主コミュニティ」に参加する投資家のみに投資勧誘を行うことが認められています。つまり、未上場企業は資金調達がよりしやすくなるということです。また同時に、事業転換が発生した場合に、株主の入れ替えといった事がコミュニティ内でも可能となってきます。

一方、投資家にとって株主コミュニティが組成されることのメリットは、流動性が高まることでしょう。株式投資型クラウドファンディングや相続などで取得した非上場株式が売買できるようになります。

なお、株主コミュニティ銘柄の取引は、当該株主コミュニティの参加者間又は参加者と運営資格を持つ証券会社との間でのみ行うことができます。

株主コミュニティ制度の開始から4年半経過した2019年12月には、株主コミュニティの累計売買取引額は20億円を超えています。

株主コミュニティ制度を推進しているのは日本証券業協会です。そして株主コミュニティ制度を運営できるのは、日本証券業協会より指定された証券会社だけです。また、運営する上では、運営元となる証券会社は株主コミュニティを組成する会社の財務状況等について審査を行い、適当と認めた場合にのみ、株主コミュニティを組成することができます。

投資家として株主コミュニティに参加するには、株主コミュニティを組成する証券会社で参加申込みをする必要があります。

株主コミュニティが組成されれば、未上場株の売買ができるようになります。

これまで未上場株は流動性が乏しいものでしたが、株主コミュニティがあることにより流動性が高まります。

ちなみに、今まで未上場株は基本的にIPO、M&A、事業会社による株式の取得、そして相対取引しかイグジットの方法がありませんでした。特に、相対取引は自身で買い手、売り手を探す必要がありましたが、株主コミュニティに参加する事で、株主コミュニティ内での取引が可能となり、この探す手間は大幅に縮小されます。

投資家にとっては「売却できる」と思えば今までよりも投資に関する心理的ハードルが下がりますので、企業にとっては資金調達ができる可能性が高くなるというわけです。

一方で、デメリットとしては、株主コミュニティを組成している証券会社を探し、株主コミュニティに参加する手間がかかります。また、発行株式数が少ないこともあり、取引量が上場株ほど多くありません。よって、今すぐ買いたい!売りたい!といったタイムリーな取引は望めません。

また、株主コミュニティ銘柄は参考となる取引価格がないことが多く、短期間に大幅に価格変動する可能性があります。

日本証券業協会の自主規制や非上場株式投資へのネガティブイメージから、これまで眠った制度と言われていた株主コミュニティ制度ですが、環境は徐々に変化し始めています。

投資家が株式投資型クラウドファンディングで取得した非上場株式を、株主コミュニティ内で売買できるようになり、これまで問題視されていた非上場株式の流動性の向上が期待できます。

株主コミュニティを組成・運営するには、第一種金融商品取引業の登録が必須条件ですが、日本クラウドキャピタルはその登録を目指すことを2019年に発表しました。登録が認可され、日本証券業協会より指定されれば、日本クラウドキャピタルは株主コミュニティを組成できる7社目の証券会社となります。また、株主コミュニティを日本で初めてネットで組成することになります。

当初はFUNDINNOで成立した取引の全ての事業者が株主コミュニティを組成するわけではありませんが、既に90案件(2020年5月18日現在)以上の調達案件が存在しており、これらの案件がすべてコミュニティを組成すると、登録銘柄だけでいえば、札証(札幌証券取引所)や福証(福岡証券取引所)に匹敵する規模になります。