企業のITリテラシー格差を無くす「Bizlink」〜クラウドソーシングのバージョンアップを目指す株式会社Growtherの調達後に迫る〜

2019年5月16日
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近年、中小企業~大企業でもクラウド上で仕事を依頼することができ、さらに、対面営業をせずとも、誰もが手軽に仕事を探せるプラットフォームとして誕生したのがクラウドソーシングサービスです。

このような世の中の流れに伴い、企業の課題にあった専門家をクラウド上で見つけ、最適なマッチングを実現させるプラットフォームサービス「Bizlink(ビズリンク)」を提供する株式会社Growtherに、今回FUNDINNOでの調達後のインタビューを行いました。


―― 2018年4月、24時間以内に上限応募額達成という状況での資金調達後、事業の進捗はいかがですか?

上限応募額は達成したもののキャンセルが出るというハプニングがありましたが、おかげさまで調達後はスピーディーに事業が進んでいます。

弊社のサービス「Bizlink」に多くの投資家の方々が集まった理由としては、市場が確実にあり、実績を出せていることだと思います。スケールの仕組みがイメージしやすかったこともあるでしょうか。JCCさんから事業計画書を丁寧に書くなどのアドバイスをいただいたことも大きな成功要因だったので、とても感謝しています。

調達した資金の使用用途は、開発と販促がメインになっています。開発については、この一年でビズリンカーの仕組み自体を実装することができ、今、週一回のハイペースでマイクロアップデートを続けています。非常にスピーディーにPDCAを回しながら開発を進められていることは、ある一定の成果と言えるかと思います。Bizlinker(ビズリンカー:企業の課題に合った専門家)さんの登録も増えています。

また、我々のビジネスモデルは、ITリテラシーの弱い企業に対して、我々のウェブマーケティングやITリテラシーの高いフリーランスや副業の方のスキルをシェアしていくという構想なので、地方回りをさせていただくことによって、関西、九州地方などのお客様が増えてきています。やはり地方のIT格差が激しいので、提供価値自体も高く、かなりご好評いただいているので、そういう意味で販促に調達した資金を使えたことは非常に良かったです。

我々は地域ごとに、商工会ネットワークを活用して全国各地の地場の商工会議所とお仕事させていただく機会を作ったのですが、その中で実際にサービスを活用していただき、好評をいただいています。その方々がビズリンカーとなって案件のご紹介をしていただけるような基盤ができ、実績を作れました。

我々の作った「Bizlink」という仕組み自体が、案件を紹介することができてマッチングされれば成果報酬が支払われる仕組みを設けています。繋がりを大事にし、ネット広告でのアプローチが難しい地方でそれをやるのはなかなかハードルが高いのですが、そこが構想通りに実現できたことは大きいです。

―― 地方進出は視野に入れていたのでしょうか?

想定内ではありました。地方に根ざすという動き自体は決まっていたので、ある一定の成果は出ると思っていました。しかし、実際に進出してみると、我々が思っていた以上にITリテラシーの格差が大きかったです。

そこで、オンラインのマーケテイングサポート事業をスタートいたしました。オンライン秘書のマーケティング版みたいな形で、企画から実務から運用までを全て「Bizlink」に登録している副業や在宅ワーカーが対応します。だからマーケティング部門のない会社さんにオンライン上でマーケティング部門を作るイメージで提供していますが、これが非常に相性がいいのです。

つまり、サイトを作っても運用できなければ意味がないので、そこをマーケティングやITのリテラシーの高い副業、プロの方の知見をもとに、企画から実行までやってもらうのです。みなさん実際に手を動かすところが苦手なので、システムの使い方などが非常に高いハードルになっているのですが、実務の部分の代行もできるという点が好評を得ています。地方の会社さんを中心に導入が進んでいて、我々の地方戦略が花を咲かせています。

地方に出るとなると、東京の案件を進めるよりも工数面で非常にコストがかかるので、資金調達せずに自社で利益を確保しながらとなると、数年後に後回しになっていたと思うのですが、調達資金があって本当に良かったです。

地方のお客様は今のところ西日本が多く、大阪、京都、兵庫、山口、広島などにいらっしゃいます。昨年実施した施策は商工会のネットワークを使っているので、各商工会さんのつながりの強いところがアプローチしやすかったので、今はそのネットワークの強いところを優先的にアプローチし続けています。

商工会は3年前から活動していて、気づいたら東京で副会長を任命いただくまでになりました。ステップアップしたら全国的な幹部の方とお会いする機会も増え、その活動にも自分自身を投資しながら、結果的に幹部の方々と同じ目線で話ができるようになってきたので、その活動も花が咲き、タイミングがあいまって作戦が一気に進んだイメージです。

――資金調達と同時に、人のネットワークを構築しておくことは大切ですね。

実にそう思います。我々のサービスはオンラインのクラウドソーシング市場だけではなく、オフラインで動いている経済圏に対してリーチするのが目的なので、ここは今20兆円くらいの市場が出来上がっていますから、ビズリンカーの仕組みでもある人の繋がりは非常に重要です。

特に、地方だったり、IT企業ではない会社さんは、横のつながりや関係性を非常に大切にしています。ここはネット広告では獲得できない領域です。そう考えると、非常に泥臭く人脈などのネットワークを活かして各地域のビズリンカーさんを増やしていき、ご自身のビジネスにおける武器として、サイト制作や、マーケティングサポートの紹介をクライアントに対して提供していくというスキームを増やしていく事が、今やるべき戦略ということになります。

地方による感覚の違いでいうと、地方の企業だと販促にかける予算そのものがなかったりしますが、補助金、助成金を活用してもらってキャッシュを生み出してもらうような支援をしながらお客さんの費用をできる限りなくしていく動きをとって入っていきました。

弊社が場を作り、ビズリンカーさんを開拓して膨らませるというイメージでしょうか。最初はビズリンカーさんに我々のサービスを活用していただき、彼らが感じた価値を彼らの周りにいるお客様にさらにご提供いただいて我々が成果報酬を払っていくというステップを設けているような感じですね。


―― 全体的に、当初の予定以上に進んでいるイメージを受けます。

開発的な側面では当初の予定通り進んでいますが、サービス設計の面はそうでもありません。提供する最終的ソリューションがわかりづらいとビズリンカーさんも提供しづらいというのが昨年やってみて気づいた点でした。

そこで、オンラインマーケティングサポート事業を始め、ウェブサイトの作成も「松竹梅」でわかりやすくパッケージ化し、そのパッケージ作成に時間を要しました。そういう意味で、地方戦略的な部分は進みましたが、全般的な販促部分で考えると想定より進んでいないという認識です。

サービス設計の難しさについては想定外でしたが、やっているうちに見えてきました。わかりやすいパッケージみたいなものがないと、相対でこの会社さんにはいくらみたいな値付け決めのところが、その道の専門家でないとできなくなるので、ビズリンカーさんがお客様に紹介する時に、いくら?みたいになるとなかなか難しいのです。

       


―― その他に想定外のハプニングはありましたか?

育成して手塩にかけていたメンバーが辞めてしまったことです。これは、大変勉強させてもらいました。事業をある程度任せていたので、組織が崩壊寸前になりましたが、その反省を生かして、それまでは私が一人社長でやっていたのですが、執行役員に一人入ってもらい、私と執行役員の二人で若手の育成と組織の運用に全体の20%くらいの工数をかけて設計しています。今年からは初の新卒も入り、組織として価値を得たと思います。 育成、組織づくりの難しさと大切さを学びました。


―― 今後力を入れたいことは何ですか?

ファイナンスの面で言うと、JCCさんで、もう一度資金調達させていただく予定があります。プレシリーズAといってもいいかもしれません。

事業的な話でいうと、今、3つの事業(商品)にわかりやすく分けています。

1. 人材事業

2. 制作事業

3. オンラインマーケティングサポート事業

制作事業とオンラインマーケテイングサポート事業の相性が非常にいいのです。サイトを作ってはオンラインサポートを入れてマーケティングをお手伝いしながら次のサービスサイトやLPを作るということを、補助金を絡めながらやっています。

今年、これを自前でも販売しますが、「Bizlink」システム内で紹介できる仕組みを作り、それを元にビズリンカーさんを増やし、皆さんが販売していける設計をしている最中です。

開発的な観点でいうと、登録者さんが増えて、案件数やメッセージ、マッチングも増えているので、データベースの洗い直しをしようとしています。   我々は案件と人材をデータで管理しているのですが、このマッチング度合いをしっかり分析し、その実績が表面化したものを実装し、今年の夏から来年の春にかけて、デザインの見直しも含めて実施する予定で予算組みをしています。次の資金調達の使い道もこういうところです。

これからは「Bizlink」の中でいかにユーザーさんがアクティブに行動できて、いかに最終アクションまで移行するかという数値が大切になってきます。 これまでは新規登録を増やすことが重要でしたが、今後はアクティブ率を高めて、ユーザーの活用度数を高めていくフェーズに移行しつつあります。

使いやすい設計になっていた方が、ユーザーさんの離脱も防げて長期に活用してもらえます。システム外でのカスタマーサポートもあるのでリカバリーはできるのですが、システム内で完結でき、ストレスなく全てできる方が、我々にとってもユーザーさんにとっても面倒じゃなくいいはずです。連絡手段が複数あるとコミュニケーションが煩雑になるので、そこを一本化できるとユーザーさんの満足度が高まります。使いやすさ、シンプルにしていくということがとても重要だと考えています。


―― 投資家へのメッセージはありますか?

既存の株主の方へも、これから株主になられる方へもそうですが、我々はまさにビズリンカーになりうる方が投資家さんの中には大勢いらっしゃると思っています。つまり顧問の方やエンジェル投資家さんやフリーのコンサルタントや士業の方々です。実際、こういった方々は経営者さんからの相談が多く、ご自身で解決できないウェブ系、マーケティング、人材課題などに対しては、ビズリンカーとして活動いただければ、クライアントさんの価値向上におそらく貢献できると思います。ビズリンカーになっていただき、大事なお客様の売上向上、ウェブ化支援などをご一緒にしていただくことができればと思います。

我々は、日本のIT化の促進に貢献できると思います。今まで東京に集中していたウェブやITの専門家に地方でもご活躍いただくことで、日本全体の経済が確実に向上するはずです。そういう思いでご一緒できるビズリンカーさんが増えたらと思います。

地方に行くと、グーグルドキュメントやスプレッドシートの使い方を指南するだけでも感動されるほど、やはり東京とは考えられないほどのIT格差があるので、投資家さんが増えるほど、ビズリンカーさんが増えるほど、世の中を良くしていけるのだと思っています。IT導入補助金なども活用させていただいているので、国の予算も活用しながら、日本のIT化を促進していきたいですね。

この事業はお客さんが喜んでくださるので非常にやりがいがあり、それが一番の強みです。喜んでいただける価値を提供し続ければ、ビズリンカーさんも喜んで紹介してくださり、経済合理性も出ます。ここを追求し続けていきたいと思います。



―― 海外進出は考えていらっしゃいますか?

今は案件ベースで東南アジアを数件させていただいていますが、今年か来年から海外エンジニアあるいはデザイナーさんの登録を増やそうと思っています。オフショア、BPOを海外でという流れの中で、今までは対象が企業だったので単価が高いという側面がありましたが、個人に依頼できるようになり、我々サイドでもブリッジSEみたいな人材を置いて、翻訳的な部分やディレクションをサポートさせてもらうという新しい展開を考えています。

日本の仕事を東南アジアの優秀なエンジニアやデザイナー個人にお願いできるようにしていこうと思っています。一人当たりのGDPが大きい国の仕事を、まだ経済圏が小さいと国の個人にお願いすることによって、安く買い叩くのではなく、適正な価格に上げていきたいのです。ベトナムでは平均月収が4~5万。ハイスペックエンジニアですら10万-15万。日本だとハイスペックエンジニアで100万-150万とかざらにいますが、そんなにスキルレベルは変わらないのです。単価を上げて、その国の経済自体を上げていく、そのような貢献ができたらと思います。

私は「幸せな人づくり」、「機会の平等な社会づくり」をしていきたいと考えています。今後もこの思いを形にすることを愚直にやっていきます。

     

※本レポートは対象となる企業の取材を通じて、情報提供を受けていますが本レポートに含まれる仮説や結論、その他すべてはアナリストの見解になります。また、本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資その他の行為を勧誘するものではありません。企業の発行する有価証券の価値を保証または承認するものではありません。

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