GPSをより小さくより身近にして、地域の問題解決法を全国に広げる! 〜青森発ベンチャー「株式会社フォルテ」のその後に迫る〜
FUNDINNO第22号案件である、株式会社フォルテ(本社:青森県青森市、代表:葛西純)に今回、調達後のインタビューを行いました。
同社は、2018年2月にFUNDINNOで募集を行い、約5分で上限応募額に達するなど非常に注目されたプロジェクトの一つでもあります。今回は同社CFOの土井氏にインタビューを行い、その後の動向を深掘りしました。
―― 目標金額18,750,000円のところ、募集開始5分を待たずに上限の37,000,000円を達成されました。なぜこれほどのスピードで上限に達したとお考えになりますか?
土井
212人の方が我々に投資してくださり、数分で上限に達したということは我々にとっても驚きでした。キャンセル待ちも200人いらっしゃるそうで、ありがたいことです。
これだけの調達ができた理由の一つは、タイミングもあったかと思います。調達したのが自動運転や、高齢者の事故の問題が目立ち始めた頃で、「今、車を未来に向けてどうしようか」という世の中の雰囲気があったからだと思います。また、車の事故を減らす、遭難者や認知症の人を探すなどの目的において「現在地」が貴重な情報だという認識が一般的になってきたところでもありました。
そこで我々は数ある製品の中でも開発をGPSに絞りました。我々のGPS端末「VOCE-NAVI」は日本独自の準天頂衛星「みちびき」の高精度位置情報を基準にしており、高層ビル街でも誤差サブメートル級の安定した位置情報測位が可能です。
―― FUNDINNOで調達した資金をどのように使われましたか?
土井
主に開発です。弊社は小さいながらもソフト、システムだけではなくハードも作れる会社なのでカスタマイズができます。端末だけでもいいし、クラウドだけでも導入でき、お客様が選択できるのです。お客様に柔軟に対応するための開発に一番力を入れました。
また、今回のGPS端末については、コンセプトは日本で作り、金型は中国で起こして作っています。その辺りに調達資金は一通り使いました。
―― 開発具合はどうでしょうか?
土井
我々は「従来はできなかったこと」に挑戦し続けています。我々のGPSは、トンネルや建物の中など通信を邪魔するものを、特殊なセンサーを組み合わせることによって「推測」することができるようになりました。今まではわからなかったから表示上は一直線でしたが、我々のGPSだとカーブを認識できるので、より正確な推測ができるのです。
小型軽量化にも成功しています。例えば和歌山実業団の駅伝のタスキにつけて、どのようにタスキを繋ぐかが、沿道に行かずに待っていてもわかるようにしました。また、オリエンテーリング、琵琶湖ライドで自転車に端末をつけて、これまでは人が立って案内していたところを、人手がかけられなくなってきたので端末で代行できるようにしました。すると間違った方に行った人に警告が出せたり、通話機能もあるのでSOSも出せるようになりました。これまで人でやっていたものを端末でできるようになってきたので、スポーツイベントには大いに使えることがわかりました。
小型軽量化、アンテナの精度を上げる開発はこれからも続きます。
来年は東北に工場を借りてパイロットラインを作って生産したいと思っています。材料費はほとんど上がらないので、利益率が高くなります。自分たちの製品で実証しながら、お客様に販売したいと思います。我々は身近なもの、小型なものを作っていきたいのです。
―― IoT端末の販売状況はどうでしょうか?
土井
みちびきのサービスが4月からという前提が半年ずれたので色々と残念な結果に終わりましたが、11、12月くらいからサービスが開始できると思います。一つの実績ができるとわかりやすい説明ができて、良い循環が起こります。
安全確認用の端末でガス会社から2億円ほどの受注をいただきました。販売はオランダのメーカーであるフィリップスで、信頼性において大きな実績になります。
この製品は普段は家に置いておくと、災害などの時、家族がどこの避難所に行ったかがわかります。つまり万が一の場合における安全管理、災害対策です。一年前倒しでこの夏から実証テストを行います。
実際、多くの人が「万が一のため」に投資するようになったことに驚いています。これまでは優先順位が低かったことが、行政も関わり、実際にできるようになってきました。
GPS端末について言えば、一般的にはドラレコ(ドライブレコーダー)がわかりやすいと思います。理屈で言えば道交法をきちんと守れば事故は減るはずですが、現実的にはそういきません。ドラレコは事故があった時などに、分析の一助となるので、ドライバーを守ります。
実際、事故があった時の保険会社とのやりとりにおいて、ドラレコがあることで全く逆転したこともあります。警察も勧めていますね。
昨年、テレビ朝日さんが弊社のGPSを使った取り組みについて30分番組を作ってくれました。ねぶた祭りの模様でしたが、GPSを一つひとつのねぶたにつけたら、場所確認ができるようになり、ガイドアプリで説明もできたので観光客にとても好評でした。また、これは雪国ならではの問題なのですが、冬になって雪が降ると除雪車に補助金が出ます。しかし、これには嘘の申告が多く、被害は億単位に上っていました。そこで除雪車に弊社のGPS端末をつけて作業の報告をするようにしたら、履歴が出るのでごまかしが効かなくなりました。つまり数百万の投資で数千万が浮いたのです。
弊社社長の信念は、「地域の課題を解決すれば全国の課題を解決できる」というものです。弊社の技術を他県でも応用していっていただきたいと思います。
GPSは精度が低いと地図上でぴったり捉えられませんが、弊社が使っているみちびきの衛星は日本の空にいるので、誤差が1メートル以下で精度が格段に良くなりました。求められていることへの対応力が、より高くなっています。
―― 電池を開発されているようですが、こちらの状況と今後どのような展開をされるのでしょうか?
土井
バッテリーの目標は、充電回数を減らすことです。IRもしましたが、自分たちで固体電池もテストしています。この固体電池は液体の3倍くらいもちます。充電が3日に1回で済むのです。しかも10分の1くらいの薄さ軽さです。固体電池は発火性が低く、−30度から100度まで使えることも利点です。
この特性を生かして、電動カートのバッテリーが切れる前にわかるようにすることができました。いずれ携帯電話にも応用できるでしょう。
実際にお客さんとやりとりしていると、想定していた以上に我々のGPS端末の応用範囲が広いことがわかります。
―― 出口(IPO)へは着実に進んでいる感じでしょうか?
土井
IPOは目標の一つではあります。できるだけ早くとは思いますが、タイミングとしては検討中ですね。
目下は開発に集中しています。去年より今年がチャンスなのです。大手は、池にクジラは放ちません。じっと見ていて湖になったら来ます。我々の市場はそういうものではない。あくまでも、どこもできないことをするのが我々の挑戦です。
優先度が低いことでも、「あったらいいな」が実現するのは、夢がありますね。
―― これからの調達を検討されている方へのメッセージをお願いします。
土井
いかに真剣に取り組むか、この一言に尽きると思います。やりたいことに対して飽くなき追求をすることはいいことですが、いかに真剣か、いかに人が喜ぶか、困っている人が笑顔になるかが最も大切なことだと思います。
表現を誇大にしないで、手が届くレベルの目標を立てて人に伝えてください。投資家の方々の一番の目的は、企業の応援です。だからこそ、応援していただくからにはきちんと受け答えをしていく姿勢が重要です。
すべてうまくいくわけはありません。ダメな時は素直にダメを認めて、理解して修正していくこと。それを投資家の方々へ伝えていきましょう。
絶対に忘れてはいけないのは、「やり遂げる」という気持ちです。結局は自分のためなのですから、逃げずにやり切るしかありません。
世の中、いいも悪いもタイミングです。予定通りいかないこともありますが、そういう時こそ、クレームをいただいたらそれに対してその日のうちにお返事をするなどの誠実で、迅速な対処をしていくと良いと思います。
特に調達後の投資家の方への対応というのはとても大切です。人様からお金を出していただくというのは、本当にすごいことなのですから。
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