売却した年に受けられる優遇措置

エンジェル税制は「投資した際」と「売却した際」の2回優遇措置が受けられます。

本ページでは、対象となるベンチャー企業にご投資され、その後、そのベンチャー企業が
・IPO/M&Aなどして『譲渡益』が出た場合
・倒産/解散などにより『譲渡損失』が出た場合
について解説します。

簡単に概要を理解されたい方は、ぜひ動画をご覧ください。


IPO/M&Aなどして『譲渡益』が出た場合

優遇措置Aまたは、優遇措置Bの場合、投資時点で優遇措置を受けた金額(=当初は課税されなかった金額)も含めて、将来の株式売却時に「譲渡益」として課税対象となります。

すなわち、投資時点での課税が猶予され、譲渡時にまとめて課税される(課税の繰延)仕組みとなっています。


優遇措置Aを選択した場合、投資した際に、投資金額から2,000円を差し引いた金額が総所得金額等から控除されます。

その為、将来株式を売却した際には、「譲渡益+投資金額-2,000円」が課税対象となり、個人の株主の場合にはそこに15.315%(復興特別税を含む)を乗じた金額が所得税として課税されることとなります。




優遇措置Bを選択した場合、投資した際に、対象のベンチャー企業へ投資した金額の全額が株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除されます。

その為、将来株式を売却した際には、「譲渡益+投資金額」が課税対象となり、個人の株主の場合にはそこに15.315%(復興特別税を含む)を乗じた金額が所得税として課税されることとなります。



一方、プレシード・シード特例の対象企業に投資した場合、投資時に課税が繰り延べられた投資額については、将来株式を売却した際も最大20億円までは譲渡益が非課税となります。


※2025年の税制改正により、プレシード・シード特例に「株式を取得した翌年末までの保有期間」が設けられました。

この保有期間内に株式を売却した場合には、投資時点で課税が猶予された金額(=非課税とされていた投資額)についても、将来の株式売却時に譲渡益として課税対象となります。

すなわち、優遇措置Bと同様に、投資時点での課税が繰り延べられ、譲渡時にまとめて課税される「課税の繰延型」となってしまいます。


※ただし、保有期間内の売却であっても、IPO後の株式譲渡や、一定のスキームによるM&A等によって譲渡が行われた場合には、例外的に最大20億円までの譲渡益が非課税となる場合があります。




倒産/解散などにより『譲渡損失』が出た場合

投資したエンジェル税制対象企業が倒産や解散などして譲渡損失が出た場合、または、売却により損失が生じた場合、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)が可能な場合があります。


CHECK POINT

・未上場株式と未上場株式の相殺は、エンジェル税制を使用しなくても可能

・上場株式と未上場株の相殺は、エンジェル税制の優遇措置でのみ可能

・エンジェル税制適用外企業や新株予約権で募集をした企業の場合は、その他株式譲渡益と損益通算は不可能

なお、倒産/解散などにより『譲渡損失』が発生した際のご注意点は、投資した年に優遇措置を受けた場合には、その控除対象金額のうち、課税繰延分を取得価額から差し引いて売却損失を計算するという点です。



優遇措置Aを使っている場合の具体例で説明します。

30万円のベンチャー投資を行っている場合、30万円-2,000円で29万8,000円が所得控除として投資した年にメリットを受けることができます。

しかし、29万8,000円はすでに優遇措置をうけているので、取得時の課税対象である2,000円のみが、損失額となります。

つまり、実質的には数百円程度の節税となってしまいます。

手続きの煩雑さに鑑みて、活用を決める必要がありそうです。

却時に受けられる優遇措置について解説している動画もございますのでご覧ください。